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ケーキの歳時記

バックナンバー

1月 アップルパイの癒し
厳冬のニューイングランド

2月 チョコレートブラウニー
バレンタインデー

3月 メープルシロップ・チーズケーキ
マサチューセッツのメイプルシロップ工場

4月 ボストン・クリームパイ
ボストンとボストンバッグ

5月 巨大なデコレーションケーキ
卒業パーティーの花形

6月 ベークセール
労働と報酬そして遊び

7月 ストロベリー・ショートケーキ
独立記念日

8月 クランベリー・ブレッド
ファーマーズ・マーケット

9月 マフィン
大学生活の思い出

10月 パンプキンパイ
ハロウィーン

11月 インディアン・プディング
感謝祭

12月 フルーツケーキ
クリスマス

10月 パンプキンパイ

10月も末になると、北東部のニューイングランドには霜が降り、みぞれ混じりの冷たい雨がときには雪になったりする。その寒空の下、子供たちが思い思いの仮想をして家々をめぐり歩くハロウィーンがやってくる。

「トリック・オア・トリート」 何かくれなきゃいたずらするぞ、というあれだ。家々では袋菓子をたくさん用意して、小さな怪物たちの襲撃にそなえる。窓辺にはろうそく、戸口にはジャック・オ・ランタン。これは人の頭ほどあるオレンジ色のかぼちゃの中身をえぐり出し、鼻の形をナイフでくり抜いて、中にあかりをともすもの。ただし、この種のかぼちゃは食べられない。

食べられるのは、もっと地味で小ぶりなものだ。こちらは宿命のようにパンプキンパイになる。大人は大人で、子供時代の楽しみを忘れられず、夜中の仮装パーティーに浮かれるのだが、ホームパーティーであれば、大きい怪物のうちの誰かが必ず、いい匂いのを焼いて持ってくる。

パンプキンはかぼちゃと訳されるけど、日本のとはかなり味が違う。日本のは、カボチャ・パンプキンとして別に売られていて、普通に出回っているものはもっと水気が多く、粘り気が少ない。したがって味を足す必要がある。クリームと、こってりとこくのある糖蜜。砂糖は白ではなくブラウンシュガーを。スパイス類はシナモン、クローブ、そしてしょうが。これをパイ生地に流し込んで焼く。

そのまま食べてもいいけれど、子供に返っている大きな怪物たちは、台所から大好物だったホイップクリームを持ち出して来るであろう。アメリカには、整髪料のムースみたいに缶から吹き出てくる仕掛けのがあり、大人たちは日ごろのダイエットも忘れて、子供時代の夢そのままに、パイが隠れるほどクリームをシューっとやる。かくして賑やかな騒ぎのうちに秋は更けて行く。

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