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ケーキの歳時記

バックナンバー

1月 アップルパイの癒し
厳冬のニューイングランド

2月 チョコレートブラウニー
バレンタインデー

3月 メープルシロップ・チーズケーキ
マサチューセッツのメイプルシロップ工場

4月 ボストン・クリームパイ
ボストンとボストンバッグ

5月 巨大なデコレーションケーキ
卒業パーティーの花形

6月 ベークセール
労働と報酬そして遊び

7月 ストロベリー・ショートケーキ
独立記念日

8月 クランベリー・ブレッド
ファーマーズ・マーケット

9月 マフィン
大学生活の思い出

10月 パンプキンパイ
ハロウィーン

11月 インディアン・プディング
感謝祭

12月 フルーツケーキ
クリスマス

3月 メープルシロップ・チーズケーキ

アメリカの北東にあるニューイングランドの春は遠い。日の光だけは春の輝きなのに風は冷たく、小川の流れもあちこち凍りついたままだ。それでも草木は春を知り、雲り空に向かってささやかな芽を吹き出す。木々はひそやかに活動を始め、枯れた樹皮の下で盛んに樹液を作り出す。ニューイングランド名産のメープルシロップが採れ出すのはこの頃だ。

メープルシロップはかえでの樹液。濃い褐色の甘い液体で、砂糖にもカラメルにもない滋味豊かで自然なこくがある。マサチューセッツの山奥のかえで林の中で、農家の人たちが共同で経営しているメープルシロップ項を見学したことがある。

かえでの幹に穴をうがってパイプを通し、その中をシロップが流れて工場に集められ精製される。素朴な小屋のようなダイニングエリアでは、農家の人の手作りのチーズケーキも食べられる。もちろんそれは、メープルシロップの香り豊かなメープルシロップ・チーズケーキだ。

アメリカのチーズケーキは、クリームチーズ、卵、砂糖などの材料を混ぜて焼くのだが、日本のベイクドチーズケーキのように軽くならず、生地は目がつまってしっとりと重い。味の方は、プレーンの場合は、たいていチェリーソースなどを供してニューヨーク・チーズケーキと呼ばれるが、他の材料と組み合わされていることも多い。

たとえばメープルシロップのほかには、チョコレート、モカ、ヘーゼル・ナッツなど。それぞれにいい風味だが、クリームチーズの風味を侵略しないメープルシロップは、いかにも春の味という感じでいい。

砂糖が貴重品だったその昔、メープルシロップは土に生きる人々にとって自然の恵みだった。人々は、春の訪れと樹液の甘さを同時に祝った。今でもメープルシロップは、何か郷愁をかたりたてるような甘味料として、お菓子や料理など、さまざまにつかわれている。

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