ケーキ歳時記
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ケーキ歳時記

4月
ボストン・クリームパイ
ボストンとボストンバッグ

   
ボストンはマサチューセッツ州の州都。アメリカの大都市の一つで、ニューイングランド地方の中心である。アメリカは建国220年余の若い国だが、その中ではイギリス植民地時代から始まる最も古い歴史を誇る。石畳の道やれんが造りの建物がとても美しい。日本の姉妹都市は京都。古都という繋がりだろう。

その京都で伝統工芸に関わっている弟が、ボストンを見て狂喜した。「ボストンはすごい。すごいなあ。ボストンバッグって、ここから来ているのかなあ」そう、あの、持ち手のついた旅行用のかばんである。しかし、ボストンバッグというのは明らかに和製英語で、アメリカで聞いたことはないし、辞書にも載っていない。なぜその名前がついたのか、よくわからない。

このような謎めいたものにもう一つ、ボストン・クリームパイというお菓子がある。

まず、しっとりとしたケーキ地を焼く。これは、名前はパイでもパイ皮なんてひとかけも使わない。れっきとしたケーキなのだ。カスタードクリームを作って、ケーキ地ではさむ。ここからが真骨頂。最上質のチョコレートをていねいに溶かし、ケーキの外側に滑らかに塗る。この時点で、水一滴でも鍋やナイフについてはいけない。チョコレートがゆるんで美しく固まらなくなる。

このボストン・クリームパイは、ボストン特産の材料を使うわけではないし、ボストンの何かに似ているということもない。まったくの推測にすぎないが、おそらく昔々、ボストンの誰かが作って有名になったお菓子で、元はパイ皮を用いたものなのだろう。

歴史に紛れて名が体を表さなくなったおかしなものたち。でもいいか。とにかくボストン・クリームパイは美味。機会があったら一度お試しください。