ケーキ歳時記
Cakediaries
ケーキ歳時記

12月
フルーツケーキ
クリスマス

   
キリスト教のクリスマス、ユダヤ教のハヌカなどが集中する12月の終わりには、必ず家族が寄り集まって楽しい時を過ごす。雪と氷で道が悪くなっていなければ、この頃の夜のドライブが私は大好きだ。これらの祭日を祝って、家々に趣向を凝らしたイルミネーションが施される。その美しい光の渦が、道の両側を流れて行く。

ニューイングランドの人は締まり屋なことで有名だけど、この季節だけは電気代なんか気にしない。軒からしずくのしたたるような、おびただしい数の豆電球や、庭の植え込みに形よくかけられた色とりどりのライト。そして家の中には、美しく飾りたてられた大きなクリスマスツリーが見える。

家というのは、その中で人が暮らす場所であるだけでなく、道行く人にメッセージを放つものだと、この季節にはいつも実感する。家族の絆が家庭内だけで自己完結するのではなく、そこで育まれた愛が外に向かって輝きだすのを象徴しているようだ。そしてそれがまさに゛ホリデイ・スピリット゛と呼ばれるものなのである。

外に向かって放たれる愛というメッセージ。アメリカには、何かにつけ人に物を贈る習慣はないが、この時期だけは別である。身近な人々に心をこめてプレゼントを選ぶ。フルーツケーキもその一つだ。

リキュール漬けフルーツと、ナッツをどっさり用意する。ケーキ地は、それらをつなぐためのものだと思っていい。どっしりと重く濃厚な焼き上がりを、ブランデーに浸した布でくるみ、それを砂糖の中に漬けて熟成させる。

私なら家族や友人とディナーの後に、夜も更けてから小さい一切れを切り分けて、濃いコーヒーと一緒に出す。この濃厚な取り合せは、夜更かしのおしゃべりの目を覚ますだろう。窓につく水滴が凍るような寒い夜に、外にいなければならない人のためにも、今夜はイルミネーションを消さずにいよう。