エッセイ
ESSAY
ESSAY
Ⅰ 主婦が見た夢
1.アメリカ留学の夢
2.イリノイへの招待
3.幻の留学
4.私への投資は800万円
5.英語との格闘はじまる
6.多国籍クラスのなかで
7.地下のキッチンでの日本食
8.作文が教科書に掲載される
9.若いころもっと本を読んでいれば
10.中国人留学生の死
11.アメリカ式ストレス解消法
12.ようやく正規の大学生として
13.自立するアメリカの学生
14.ドライブ・デビュー
15.驚異のシルバーパワー
16.ニューヨークへひとっ飛び
17.大陸横断旅行
Ⅱ アメリカンケーキへの道
18.アメリカン・ケーキとの出会い
19.おしかけて、弟子入り
20.グレート・アメリカンケーキへの道
21.グレート・アメリカン・アップル・パイの
作り方のポイント
22.セカンド・イズ・ザ・ベスト
23.ベースボールとアメリカン・ケーキ
24.歴史で味わうケーキ作り
25.未知のケーキとの遭遇(1)
26.未知のケーキとの遭遇(2)
27.卒業
28.遅すぎることはない
29.あとがき
15
驚異のシルバーパワー
動物と一緒にしては失礼だが、アメリカで車を運転していて、たまにどきっとするのがお年寄りのドライバーとの遭遇である。私が暮らしていたところでは、下は16歳の高校生から、上は80歳以上のおじいさん、おばあさんまで車を利用するのは当たり前。
ある日曜日の午前中のことである。久しぶりに髪を切りに美容院に行った。車で30分ほどのショッピングモールの中の美容院の近くで車を止めようとスペースを探し、「いいところが見つかった、ラッキー」と思って車を入れていると、別の車が反対方向から入ってきて、どんどん突っ込んでくる。こちらの動きなどお構いなしだ。
「なにすんの」と、思ってぐっと相手を睨んだが、かなり高齢のおばあさんだった。われ関せずといった様子で、よっこらしょとドアを足で思いきり蹴り開けて、よたよたとモールに入っていった。
こうしたシルバードライバー(特におばあさん)に共通するのは、他の車や人はあまり見ていないとういうのか、視界に入っていないようなのだ。ただ、まっすぐ前を見て進む。だから、アメリカではおばあさんの運転に要注意なのだ。
しかし、見方を変えれば、運転してどんどん行動するというパワーがある証拠でもある。美容院前の駐車場で会ったおばあさんも、そうしたパワーの持ち主だった。私が美容院で鏡の前に座ると、偶然そのおばあさんが隣の席にいる。なにやら店員と楽しそうに会話をしている。
「どうでしたフロリダは?」
「とっても楽しかったわ」
「それで、今回も滑ったんですか?」
「ううん、ちょっと体調が悪かったので今回はよしたの」
よくよく聞いていると、このおばあちゃん、フロリダにいる孫のところに行って、水上スキーをするというのだ。美容院を出るときも、つまずくほどの歩き方だったのに。アメリカの人だな。
そう言えば、あるテレビ番組では老人のシンクロナイズド・スイミングの大会に向けて練習に励む老人クラブのメンバー8人の様子を放映していた。全員70歳以上の老人たちで、中には80歳のおばあさんも含まれていた。
最後のリハーサルということで、顔も美しいメークアップをして、そろいの水着を着て、懸命に水中遊泳している様子がアップで映しだされていた。実に生き生きとして、深く刻まれたしわの顔が水中で美しく輝いていた。
「アメリカという国はなんでも可能にしてしまうんだな」
そう思っていると、この番組のあとのニュース番組のなかのお天気情報をみてさらに驚いた。“お天気おねえさん”がなんと、お腹の大きな妊娠中の女性だったのだ。歳をとろうが、妊娠しようが、関係ない。要は中身だということなのだろう。
ある日曜日の午前中のことである。久しぶりに髪を切りに美容院に行った。車で30分ほどのショッピングモールの中の美容院の近くで車を止めようとスペースを探し、「いいところが見つかった、ラッキー」と思って車を入れていると、別の車が反対方向から入ってきて、どんどん突っ込んでくる。こちらの動きなどお構いなしだ。
「なにすんの」と、思ってぐっと相手を睨んだが、かなり高齢のおばあさんだった。われ関せずといった様子で、よっこらしょとドアを足で思いきり蹴り開けて、よたよたとモールに入っていった。
こうしたシルバードライバー(特におばあさん)に共通するのは、他の車や人はあまり見ていないとういうのか、視界に入っていないようなのだ。ただ、まっすぐ前を見て進む。だから、アメリカではおばあさんの運転に要注意なのだ。
しかし、見方を変えれば、運転してどんどん行動するというパワーがある証拠でもある。美容院前の駐車場で会ったおばあさんも、そうしたパワーの持ち主だった。私が美容院で鏡の前に座ると、偶然そのおばあさんが隣の席にいる。なにやら店員と楽しそうに会話をしている。
「どうでしたフロリダは?」
「とっても楽しかったわ」
「それで、今回も滑ったんですか?」
「ううん、ちょっと体調が悪かったので今回はよしたの」
よくよく聞いていると、このおばあちゃん、フロリダにいる孫のところに行って、水上スキーをするというのだ。美容院を出るときも、つまずくほどの歩き方だったのに。アメリカの人だな。
そう言えば、あるテレビ番組では老人のシンクロナイズド・スイミングの大会に向けて練習に励む老人クラブのメンバー8人の様子を放映していた。全員70歳以上の老人たちで、中には80歳のおばあさんも含まれていた。
最後のリハーサルということで、顔も美しいメークアップをして、そろいの水着を着て、懸命に水中遊泳している様子がアップで映しだされていた。実に生き生きとして、深く刻まれたしわの顔が水中で美しく輝いていた。
「アメリカという国はなんでも可能にしてしまうんだな」
そう思っていると、この番組のあとのニュース番組のなかのお天気情報をみてさらに驚いた。“お天気おねえさん”がなんと、お腹の大きな妊娠中の女性だったのだ。歳をとろうが、妊娠しようが、関係ない。要は中身だということなのだろう。