エッセイ
ESSAY
ESSAY
Ⅰ 主婦が見た夢
1.アメリカ留学の夢
2.イリノイへの招待
3.幻の留学
4.私への投資は800万円
5.英語との格闘はじまる
6.多国籍クラスのなかで
7.地下のキッチンでの日本食
8.作文が教科書に掲載される
9.若いころもっと本を読んでいれば
10.中国人留学生の死
11.アメリカ式ストレス解消法
12.ようやく正規の大学生として
13.自立するアメリカの学生
14.ドライブ・デビュー
15.驚異のシルバーパワー
16.ニューヨークへひとっ飛び
17.大陸横断旅行
Ⅱ アメリカンケーキへの道
18.アメリカン・ケーキとの出会い
19.おしかけて、弟子入り
20.グレート・アメリカンケーキへの道
21.グレート・アメリカン・アップル・パイの
作り方のポイント
22.セカンド・イズ・ザ・ベスト
23.ベースボールとアメリカン・ケーキ
24.歴史で味わうケーキ作り
25.未知のケーキとの遭遇(1)
26.未知のケーキとの遭遇(2)
27.卒業
28.遅すぎることはない
29.あとがき
22
セカンド・イズ・ザ・ベスト
ケーキ作りは、20年前のイリノイにわずかに滞在したとき、ホームステイした家の奥さんから習ったことがあった。でも、そんなことはとっくに忘れてしまっていた。
私は全部で三人の先生から、アメリカにいる間にケーキ作りを教えてもらったが、ローリー先生だけでなく、みんながいうのは、「ベーキングは気持ちが大切」だということ。気持ちがそぞろだと、デキも悪い。おいしく食べてもらおうという気持ちを込めて作るのがなにより大切だという。
それと、共通するのが、「音楽も味の中に入れましょう」という点。一人はクラシック、あとの二人はポップスだったが、つくっている最中も何か音楽を必ずかけている。そして、もう一つ三人に、そして私にも共通することがあった。ともに離婚しているということである。そして、先生たちは再婚している。誰かが言っていた。「セカンド・イズ・ザ・ベスト」(二番目が最高だ)と。そんなものだろうか。
ローリー先生はポップスを聞きながら、黙々と作って黙々と教える。外部の第三者が見たら、こわそうな先生だなと思われるようなところもあるくらい。大切なことしかいわない。しかし、ポイントはしっかり抑えている。細かい点で言うと、まず、「材料はキチッと計らないといけない」という点。次に、「オーブンはみなそれぞれ場所によって違うので、例えばベーキング50分とあっても、必ず10分前にはチェックすること」と、教え込まれた。場所によっては50分が40分で済むこともある。
こうして習っている間に、「アメリカのベーキングって、こんなにいろいろ種類があるのか」という素朴な驚きを感じた。と同時に、そのころから図書館などで徐々にベーキングに関する本を読むようになった。
大学の勉強もしなくてはならないから時間はない。とにかく大学を卒業することが夢の実現だから、これを第一にしなくてはいけないという思いはある。しかし、ベーキングの方も、これから自分が生きていくうえでの基礎になるかもしれない現実的な勉強である。「夢」と「現実」。まさに、ふたつの間でますます忙しくなっていった。
ところが、ベーキングの方は、レシピを英語で読んでいても大学の授業とは違い、その英語の単語はどんどん頭に入ってくるから不思議だった。レシピの英語は「2カップ○○を入れよ」というようにすべて命令文で書かれている。だから、最初に動詞の原型が来る。それを何度も作るときに見るから、動詞とその使い方などはいやでもわかる。ベーキングを通して英語が身に付いたと、しみじみ思った。好きなことはそういうものなのだろう。
帰国後私は、「英語も食べませんか」と、いってベーキングとそのレシピを英語で教えるようになったのだが、自らの体験から、実技を通して英語を習うということは非常に意味があるとわかった。
私は全部で三人の先生から、アメリカにいる間にケーキ作りを教えてもらったが、ローリー先生だけでなく、みんながいうのは、「ベーキングは気持ちが大切」だということ。気持ちがそぞろだと、デキも悪い。おいしく食べてもらおうという気持ちを込めて作るのがなにより大切だという。
それと、共通するのが、「音楽も味の中に入れましょう」という点。一人はクラシック、あとの二人はポップスだったが、つくっている最中も何か音楽を必ずかけている。そして、もう一つ三人に、そして私にも共通することがあった。ともに離婚しているということである。そして、先生たちは再婚している。誰かが言っていた。「セカンド・イズ・ザ・ベスト」(二番目が最高だ)と。そんなものだろうか。
ローリー先生はポップスを聞きながら、黙々と作って黙々と教える。外部の第三者が見たら、こわそうな先生だなと思われるようなところもあるくらい。大切なことしかいわない。しかし、ポイントはしっかり抑えている。細かい点で言うと、まず、「材料はキチッと計らないといけない」という点。次に、「オーブンはみなそれぞれ場所によって違うので、例えばベーキング50分とあっても、必ず10分前にはチェックすること」と、教え込まれた。場所によっては50分が40分で済むこともある。
こうして習っている間に、「アメリカのベーキングって、こんなにいろいろ種類があるのか」という素朴な驚きを感じた。と同時に、そのころから図書館などで徐々にベーキングに関する本を読むようになった。
大学の勉強もしなくてはならないから時間はない。とにかく大学を卒業することが夢の実現だから、これを第一にしなくてはいけないという思いはある。しかし、ベーキングの方も、これから自分が生きていくうえでの基礎になるかもしれない現実的な勉強である。「夢」と「現実」。まさに、ふたつの間でますます忙しくなっていった。
ところが、ベーキングの方は、レシピを英語で読んでいても大学の授業とは違い、その英語の単語はどんどん頭に入ってくるから不思議だった。レシピの英語は「2カップ○○を入れよ」というようにすべて命令文で書かれている。だから、最初に動詞の原型が来る。それを何度も作るときに見るから、動詞とその使い方などはいやでもわかる。ベーキングを通して英語が身に付いたと、しみじみ思った。好きなことはそういうものなのだろう。
帰国後私は、「英語も食べませんか」と、いってベーキングとそのレシピを英語で教えるようになったのだが、自らの体験から、実技を通して英語を習うということは非常に意味があるとわかった。