エッセイ
ESSAY
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留学主婦のアメリカン・ケーキ

留学主婦のアメリカン・ケーキ

45歳でアメリカ留学した平野顕子のエッセイ集
(2000年創樹社・発売終了)を加筆・転載いたします。

お楽しみいただければ幸いです。

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あとがき

   
人と人とを結ぶ甘い語りの源、それがデザートである。アメリカでは食事の後、必ずデザートを食べる。これは、料理に砂糖をあまり使わないので、最後に甘いものを腹に入れようという、いわば生活の必需品として生まれたような気がする。また、家族団欒を大切にするアメリカ人の生活の知恵かも知れない。

ケーキ作りは、私に学ぶ喜びと勇気を与えてくれた。加えて、いくつになっても挑戦(チャレンジ)する大切さも学んだ。アメリカでの日々が私にそれらを教えてくれたような気がする。

私もケーキ作りを通して、様々な人に出会い、助けられ、友情を育んできた。本当にアメリカ留学生活が十倍楽しくなったといっても過言ではない。この場をかりて感謝の気持ちを伝えたいと思う。

まず、ケーキとの出会いのきっかけをつくってくださったコネチカット大学英文学教授のアナ・チャーターズ先生とご主人のサム・チャーターズさん。そして、私の大切なブレーンであるコネチカット大学大学院の山根麻紀さん。彼女には時々、文章の校正や、コネチカットの人々の生活模様や自然の様子などを教えてもらった。

ELSで同じ授業を受けた古銭さん夫妻と、お嬢さんのみきちゃん。わたしがホームシックに陥らずに安心していられたのは、お二人のおかげです。

忘れてならないのが、ケーキの先生であるシャロル・ジーンさん。親切な授業をして下さっただけでなく、ケーキの歴史や材料のことなど、忙しいなかを調べて下さいました。年齢が近かったせいもあって、先生と生徒というよりも、親しい友人としてお付き合いをしている

それから、私たち留学生の世話や相談役として、大学の自治会からつかわされたジェニファー。当時はコネチカット大学の三年生だった彼女(現在は日本の長崎県で中学生に英語を教えている)には数え切れないほどの優しさをもらった。

帰国してからも様々な方にお世話になった。まずギャラリー6のオーナーである石樽京子さん。彼女は忙しくて貧しい食生活をしている私の健康を気遣ってくださり、よく食事に誘ってくださいました。

つたない私を助けて協力してくれたアシスタントの中村和恵さんと三並知子さんにも感謝している。また、私のクラスに通う生徒さんたち。一ヶ月に一度しか顔を合わさないけれど、皆さんから学ぶことは多く、いつも刺激を受けている。

健康に生んでくれた両親と、飛びすぎている母親を、優しく、時には冷たく見守ってくれた娘にも、ありがとうと言いたい。しかし、私が今、京都でケーキ教室とカフェ、パントリーを一つの場所で同時に出来る店を準備したり、アメリカで下宿屋の経営とNYUへの留学(マスターコース)を計画していることを話したら、きっと呆れかえるにちがいない。

最後に、この企画に賛同し、出版にまでこぎつけてくだささった創樹社の倉澤邦夫社長に感謝します。

(この「あとがき」は、2000年4月14日出版時のものです)